■「ボールをよこせ」は責任感の表れ

大住「今の選手に、そういう練習の仕方が認められるのかは分からない。FWでも誰でも、すぐに攻撃から切り替えて守備をしないと試合に出られないような時代でもある。でも、そのエピソードの良いところだけをとらえるならば、釜本さんは自分の仕事に命を懸けていたと感じるんだよね。ボールを止めてゴールの隅に強く飛ばして点を取る、という自分の仕事にね」

後藤「実際に1試合につき1点取ってくれる選手がいるなら、そういう練習をしてくれればいいよ」

大住「そこまでしなければ、第2の釜本は生まれないのかな、という感じはするよね」

川本「今の若い選手はいつも言われていると思うけど、ガマさんは体の使い方がうまかった。DFが100%の力でボールを奪いにきても、ガマさんはヒュッと体を預けたりして、対処していた。ボールをもらうときにたくさん動かないんですけど、それでもボールをよこせというのは、来たら絶対、何とかするからという責任感の表れだったと思います」

大住「シュートまで持ち込む頭脳は、ずば抜けていたよね。ボールの軌道を見て、落ちる位置、さらに相手がどう寄せてくるか、じゃあどこにボールを置けばいいかということまで全部計算してプレーしていた。何となく止めてから、何となく相手DFをかわしてシュートを打つ、なんてことはほとんどなかったよね」

後藤「現代ではゴールの場面をあらゆる角度から動画で再生して、こう動いたから視野から消えて…とか全部教えてくれる。昔はテレビ中継そのものがなかったから、自分で生で見ながら、あるいはプレーしながら、そういうことを感じ取るしかなかったんだよね」

(5)へ続く
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