後藤健生の「蹴球放浪記」第278回「釜本さんの母校を見に行く」の巻(1)夜行バスで「最高に試合が見やすい」スタジアムへ、皇后杯準決勝前に「国宝」を拝むの画像
広隆寺前を走る嵐電。提供/後藤健生

 日本サッカー界最強のFWとして知られた、釜本邦茂さんが亡くなった。多くの人々が、不世出のサッカー選手の死を悼んだが、蹴球放浪家・後藤健生もそうしたひとりだ。今回は、尊敬していた釜本さんの母校を訪ねたときのエピソードを明かす。

■夜行バスは「絶好のトレーニング」

「蹴球放浪記」をいつもお読みいただいている方はご承知のように、僕は日頃から高速バス(夜行バス)を愛用しています。

 最大の理由はもちろん料金(運賃)が安いからです(なにしろ、新幹線の3分の1程度なのですから……)が、「長距離移動に慣れておくこと」も高速バスを利用する大きなメリットです。

 もちろん身体的な意味でも慣れておくことが大事ですが、最も大事なのはメンタル面です。つまり、あまり遠出をしないで暮らしているとついつい“出不精”になってしまうのと同じで、楽な近距離移動だけしかしないでいると遠距離移動が億劫になってしまいます。

 それを防ぐためには、夜行バスは絶好のトレーニングになるというわけです。

 南米大陸までの36時間に及ぶフライトとか、20時間もかかるバス移動……。そうしたことに尻込みしていては、「放浪家」は務まりません。

 2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって海外旅行ができない時期がありましたが、その間、僕は高速バスと格安航空会社を駆使して、それまで以上に国内旅行に行っていました。地方でやっている、小さな大会を求めて移動を続けました。

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