■「優勝」を狙える位置にいた浦和
半世紀を超すサッカー取材生活のなかで、あやうく熱中症、あるいは脱水症状に陥りそうになったことが一度だけある。
2006年、ヴァンフォーレ甲府がJ1に初昇格を果たした年である。甲府の小瀬競技場に、初めて浦和レッズが遠征した。ここまで、大木武監督率いる甲府は得意のショートパスサッカーで健闘して13位。ギド・ブッフバルト監督率いる浦和は2位で、初優勝を狙える位置にいた。
7月29日。当日の公式記録を見ると28.1度、湿度62%とあるが、梅雨空け直後で、とにかく猛烈に暑い日だった。午後6時半キックオフの試合に備えて、5時過ぎにはスタジアムに入ったが、浦和から大量のサポーターが自動車を連ねてやってきたこともあり、すでに「超満員」であった。「超」の字はけっして誇張ではない。公式記録には、「入場者数17,000人」とある。ピッタリこの競技場のキャパシティの数字である。実際にはこの「満員」を大きく超える人が入っていたに違いない。
夕食を買うべくスタジアム2階の売店に行った。しかし長い行列に並ぶハメになり、なんとか弁当は入手できたが、飲み物を買う時間はなく、記者控え室に戻った。しかし、そこでも、スタジアムに着いたときには大きな給水ポットに用意してあったお茶が「売り切れ」になっていた。仕方なく飲み物なしで弁当を食べ、記者席に向かった。