大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第167回「サッカーに飲水タイムは必要か」(3)炎天下に「欠かせない」アイテム、浦和ファンで「超満員」のスタジアム、売れ切れで「熱中症」寸前だった甲府の夜の画像
エース長谷川唯らが活躍したパリ五輪でも、給水の主流は「使い捨て」のペットボトル。ただ、ヴァンフォーレ甲府のホームでは、試合を見守る人々の給水がままならぬ事態に…。撮影/渡辺航滋(Sony α-1使用)
【画像】「熱さ」も「暑さ」もそろっていた甲府のホーム

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、生命に不可欠なもの。

■ペットボトルの中は「冷たいまま」

 またまた私が監督をしている女子チームの話になる。練習中に私がほとんど水を飲まないのを見かねて、「オースミさんも飲んでね!」と、選手たちは母親のように声をかけてくれる。しかし「飲水不可時代」に選手生活を終えた私は、スクイーズボトルから飲むのがひどく不得手で、ボトルの口を引っ張って空中から放出すると、口にはあまり入らず、決まってシャツをビショビショにしてしまう。

 そこで私は、練習前に自動販売機でペットボトルに入った水を買い、それを飲むことにした。しかしもちろん、真夏の炎天下、人工芝のピッチの上に置かれたペットボトルはたちまちぬるくなり、やがてお茶を入れられそうな熱湯になってしまうのである。

 数年前、それを見ていた選手たちが思いがけないものをプレゼントしてくれた。「ペットボトルクーラー」である。ねじ式の上部の口を外し、冷たいペットボトルを入れて口を閉めると、ペットボトルが固定される。上部にはペットボトルのセンの部分が出ているから、そのまま開けて飲むことができる。

 これが非常な「スグレもの」だった。炎天下に2時間置いておいても、外側は熱くなるが、あーら不思議、ペットボトルの中の水は冷たいままなのだ。以後、私は、練習や試合だけでなく、夏の取材にはこの「ペットボトルクーラー」を欠かさないようにしている。

 人間の心理は興味深い。取材している試合で「飲水タイム」が取られると、見ているほうも無意識に机上のボトルに手が伸びる。東京V×川崎のような「熱戦」の後半なかばになっても冷たい「ペットボトルクーラー」の麦茶をのどに流し込むと、選手たちと同じように最後の力を振り絞れるような気がするのは、私だけだろうか。

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