■サッカー界「2つの宝」にひと晩で…
背中に「ONZE」のロゴを入れたベージュのおしゃれなダウンジャケットを着てジーンズ姿でブエノスアイレスの繁華街を闊歩する美人デザイナーたちは、たちまちブエノスアイレスっ子たちの話題になった。
「大会が終わったらどうするんだ?」と、決勝戦を前に旧知の「ONZE」記者から聞かれた。
「終わったら? 大急ぎで東京に帰って速報号をつくらなければならないよ。まず1週間は家に帰れないな。君は?」
そう聞くと、彼は一瞬、気の毒そうな顔をしたが、いつものクールな声でこう言った。
「僕は決勝戦後に記事を書いて仕事はすべて終わるから、あとはカリブ海の島に行って1か月間ほど休暇さ」
残念ながら、「ONZE」は1989年に他の雑誌と合併し、ごく普通の「サッカー雑誌」になってしまったが、1976年から十数年間のこの本は、間違いなく世界のサッカーファンに夢を与え続けた「宝」だった。
こういうわけで、私は「ごくまれ」なはずの「拾いもの」を、ひと晩に2つもしたのだった。









