大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第166回「思いがけない拾いもの」(4)世界中で人気となった「新参者」、ブラジル代表エースを「コルコバート」の丘への画像
ブラジル代表エースのジーコ氏(写真右)を、コルコバートの丘で撮影するなど、アイデアも秀逸だった。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム。今回のテーマは、世界に知られる前の「将軍」と「イレブン」との予期せぬ遭遇。

■フランス代表「8番」が表紙の雑誌

 試合が終わり、倉井カメラマンと待ち合わせてパルクデプランスを出ると、4万5000人をのみ込んだパルクデプランスからはまだ続々とファンが吐き出されてきていた。その人波にもまれながら地下鉄駅に向かっていると、小さな立ち木の下にテーブルを置き、雑誌を何冊も並べているのを見た。

 近づいてみると、最近発刊されたばかりのサッカー雑誌のバックナンバーが並べられ、定価の3分の1ほどで売られていた。まるでバナナのたたき売りのような光景に思わず苦笑し、手当たり次第に3冊ほどつかんで料金を払った。そのなかの1冊の表紙は、1人の選手のアップで、ホテルに戻ってから、それがこの日8番をつけてプレーしていた(10番はラルケだった)プラティニであることを知った。

 表紙には「ONZE(オンズ)」のタイトルがあった。フランス語で「11」を示す言葉である。何のことはない。「サッカー・マガジン」とは不倶戴天のライバル誌である「イレブン」と同じ名前だったのだ。

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