
日本サッカー界のレベル向上が著しい。各年代の代表チームも、世界各地の大会で高い技術を披露している。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、世界の大舞台で勝つためには、いや、今後もアジアで勝ち続けるためですらも、“足りないもの”があるという。それは何か?
■あまりにも少ない「決定機」
ところが、こうした素晴らしい攻撃力を持つ割に苦戦を強いられることも多い。
たとえば、メキシコ相手に素晴らしい得点を決めたU-20日本代表だったが、前半は完全にゲームを支配し続けたにもかかわらず、追加点を奪えなかった。そして、後半に入るとメキシコが強引にドリブル突破をはかりながらリズムをつかみ、日本は耐え凌ぐ時間が長くなってしまう。そして、61分にゴール前にクロスを放り込まれたのをきっかけに失点してしまう。
結局、試合は1-1の引き分けに終わり、レギュレーションに従ってPK戦が行われ、日本は3-4で敗れてしまった。
前半のうちに1点を追加できていれば、90分で勝利できた可能性はかなり大きかっただろうに……。
もちろん、サッカーというのはゴールを決めるのが大変に難しい競技である。だから、結果として得点できなかったことは仕方がない。
問題は、しっかりと前を向いてシュートを撃てるような状況、つまり「決定機」の数があまりに少ないということだ。あれだけ、相手陣内深くにボールを運べた割に、決定機が作れないのだ。
そんな、メキシコ戦のU-20日本代表を見ていて、僕は「既視感」を覚えた。
そう、今年の2月に中国の深センで開かれたU20アジアカップである。
日本代表は初戦でタイに3対0で勝利したものの、シリア、韓国と連続して引き分けに終わり、グループ2位で通過。準々決勝でもイランと延長までの死闘を繰り広げて1-1の引き分けに終わり、PK戦で勝利して辛うじてU-20ワールドカップ出場権は確保したものの、続く準決勝では連戦の疲労もあってオーストラリアに完敗してしまった。
5試合を戦った日本代表は、1勝3分1敗の成績。これでワールドカップ出場権を獲得できのだから、かなりラッキーだったと言わざるをえない。
シリア戦からイラン戦までの3試合、いずれも試合内容としては日本がコントロールし続けていた。アジアの強豪である韓国やイラン相手に、あれだけ圧倒した試合ができたのだから、本当に大したものだと思った。だが、その優位性を得点に結びつけられず、日本は苦戦の末のベスト4に終わったのだ。