
鮮やかなスルーパスで決定機が生まれたのは、5月18日に開催された川崎フロンターレとセレッソ大阪とのJ1リーグ第17節の後半12分のことだった。脇坂泰斗が中盤で奪ったボールをマイナスにいた山本悠樹につなぐと、足裏でコントロールしながら1秒にも満たない一瞬の時間を作る。
その時間が、誰に向けられたものだったかはすぐに分かる。相手最終ラインと駆け引きしていた山田新が裏に抜け出すためで、直後、糸を引くような鮮やかなスルーパスが放たれる。瞬間的にスプリントした山田は右足でゴールに流し込もうとする。これは相手GKの残していた右手に弾かれたものの、山本にかかればゴールへの道筋を一瞬で作れることを示すかのような場面だった。
山本はこの場面だけでなく、ACLEファイナルズからスゴみをみせている。準々決勝アルサッド戦ではPOMに輝くほどのパスセンスを見せつけた。試合後、高揚感もなく「(自分が選ばれたことを)渋いなと思いました」と振り返っていたが、その試合から、山本はそれまで以上のコンダクターぶりを見せつけている。サウジアラビア・ジェッダのプリンス・アブドゥッラー・アルファイサル・スタジアムが、そのお披露目の場になったかのように。