■「しっかり見て、準備して、丁寧に判断するという作業を間違えずに」

 5月22日の練習後、山本に聞いてみた。ACLEで掴んだものがあるのか、それとも、チームとして整理できたものが多い中で気持ちよくプレーできているのかと。すると、「チームとしてのやり方が浸透しているのもあると思いますし、相手のブロックを広げてくれる作業を前の選手がしてくれているので、比較的落ち着いてボールを触れると思います」と答えながらも、以下のように続ける。
「ACLを経て、ああいう圧の中でもやれたところと、まだ足りなかったところが自分の中で課題としてある中で、ああいう場を経験したからこそ、どういう状況でも落ち着いてやることが一番大事だっていうのが、今自分の中であるので、それがいい方向に出ているのかなとは思います」
 山本自身、ACLEファイナルズ前後でのプレーの違いを実感しているか、質問を重ねると、「そうですね」と首肯したうえで、「すごい落ち着いてやれてると思いますし、今までもすごい落ち着いてやってたつもりではありましたけど、それよりもより余裕を持ってプレーしているというか、しっかり見て、準備して、丁寧に判断するという作業を間違えずにやり続けられている」と話すのだ。
 ACLEファイナルズは、川崎フロンターレにとって特別な場であったが、選手個々にとっても大舞台だった。準々決勝アルサッド戦こそ観客数は2000人台だったものの、決勝は6万人が入る満員のスタジアムで“超アウェイ”の環境が用意された。そこで流した涙は、誰もがけっして忘れることはないだろう。
 そのACLEファイナルズで山本に変化をもたらしたものは何か。山本は、ある選手の名前を出した――。
(取材・文/中地拓也)
【「後編」へつづく】

(2)へ続く
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