
AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破って、決勝戦にコマを進めた。アジア最強クラブを決める大会での準優勝はチームにとって、そして送り出したJリーグにとっても喜ばしいことではあるが、同時にアジア地域のサッカーが抱える「大問題」が浮き彫りになったと指摘するのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか、大会を徹底検証する!
■昨年までと「意味が違う」準優勝
サウジアラビアで開かれていたAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)決勝大会に進出していた川崎フロンターレ。決勝ではアル・アハリ(サウジアラビア)に完敗して準優勝に終わったが、決勝進出は“快挙”と言っていい。同じ「準優勝」といっても、昨年まで行われていたAFCチャンピオンズリーグとは意味が違う。
決勝大会の開催地はサウジアラビア西部のジッダだった。紅海に面した港町で、イスラム教の聖地マッカ(メッカ)からもほど近い。日本代表のアウェーゲームが行われることも多く、サッカー関係者にとって今ではすっかり馴染み深い土地となってしまった。
サウジアラビアからは3つのクラブが決勝大会に駒を進めてきた。東地区からは日本が2クラブ、韓国とタイから1クラブずつだった。いわば、「サウジアラビアによる、サウジアラビアのための大会」だった。
サウジアラビアは豊富なオイルマネーをスポーツ分野に惜しみなく投じている。
サウジアラビア王国は、サウド王家の王族が富と権力を独占する独裁国家だ。そんなサウジアラビア政府にとって、スポーツは国民に向けて提供する娯楽なのだ。ローマ帝国の時代以来、独裁国家は大衆に娯楽を与え続けなければならないのだ。一方、国際的にもサウジアラビアの独裁体制への批判の声が大きいが、スポーツはそうしたサウジアラビアのイメージアップを図るためのものでもある。