■遠野大弥のシュートを許した「右SB」
【9分の遠野大弥のシュートまでの場面】
横浜のヤン・マテウスが右サイドから上げたクロスを遠野大弥が左足で合わせるが、ゴールキーパー(以後、GK)の西川周作にセーブされる。
この場面は、浦和の右SBの石原広教がボールウォッチャーになっている。9分25秒の浦和のディフェンスをしている選手たちを見てもらいたい。センターバック(以後、CB)のダニーロ・ボザは、首を振りながら人とボールを捉えている。ボザはマークする横浜のアンデルソン・ロペスにしっかりとついている。ロペスの前に立って、右手を相手に触れながらマークしている。左SBの長沼洋一も、植中朝日に密着して体をぶつけて、必死にケアしている。
しかし石原は、マークするべき遠野を一度も見ようとしないで、パッサーのほうだけを見ている。したがって、遠野がフリーでシュートを打てたのである。相手が「どこに上げてくるのか」と、ボールを見たい気持ちはわかるのだが、最終的には「人」を意識しながらボールと人を同一視野に捉えられる場所に立たないとピンチの場面を作ってしまう。
【前半アディショナルタイムのマテウス・サヴィオのフリーキックの場面】
サヴィオがキックを蹴る瞬間、壁の真ん中にいる浦和の3選手がいっせいにしゃがみ込む。GKの朴一圭は、しゃがんだ浦和の選手の上にサヴィオが蹴ってくると想定したのだろう。しかし、ボールはファーサイドのほうに蹴られて、朴は一歩も動けなかった。
デザインされたフリーキックなのだろうが、横浜の壁の位置にも問題があった。ファーサイドのほうに選手が一歩寄っていれば、サヴィオがあの位置に蹴らなかったのだろうが、結果的に浦和のデザインが優ったゴールだった。
【45分の浦和の追加点の場面】
CBの諏訪間幸成が朴に「来なくてもいい」と合図を送っているので、諏訪間が大きく蹴ろうとせずに体を反転して左SBにボールを送っていれば、なんの問題もないシーンだった。
ただ、スローインと同時に渡邊が決め打ちして走り込んでいたので、追加点を挙げられたとも考えられる。スローターも近くにいる選手に出したほうが安全だったのかもしれないが、横浜にとってはやらなくてもいい得点だったことは確かであろう。
記事後半では、52分からの松尾佑介のシュートに至るまでの場面から分析していこう。