■問題は「センターバック」の選択ミス

【14分の長沼洋一のシュートに至るまでの場面】
 マテウス・サヴィオが左サイドラインに張っている。右サイドの金子拓郎もサイドラインに張っていた。両ウイング(以後、WG)がサイドに大きく開いてポジショニングする。左サイドバック(以後、SB)の長沼洋一は、インナーラップ(ボールを保有している選手の内側を、他の選手が後方から追い越す)しながら前進してくる。
 14分13秒のシーンを見てもらいたい。渡邊が前進して、京都の最終ラインの4人とマッチアップ状態になっている。なおかつ、京都の左SBの佐藤響は、本来ならばもっと中に絞らなければならないのだが、サイドに張る金子のポジションが気になって、中に絞りきれない。
 サヴィオから裏に出されたボールに長沼が走り込む。京都のセンターバック(以後、CB)のパトリック・ウイリアムと松尾が競い合うようにポケットに入っていく。先に松尾がボールに触れて、折り返しのパスをペナルティエリアに入れる。そこに長沼が走り込んでシュートを打つ。
 ここで問題なのは、CBウイリアムの守備である。松尾を自分の左の手元に置いておくようなポジショニングをしていないので、松尾に先にボールに触られてしまった。完全に松尾に裏を取られた状態で対応している。
 なぜ、ウイリアムが松尾の前に立ってしまったのかといえば、右SBの須貝英大のカバーリングに、先に入ってしまったからである。つまり、プレーの選択ミスによって、松尾に裏へと抜けられてしまったのである。
 ワントップで構える浦和は、攻撃人数を増やすために両WGがサイドに大きく開いてSBを使うことで、攻撃の厚みを出そうとする。なおかつ、トップ下の渡邊が相手CBの近くに立っているので、「4-4-2」に近いシステムで攻撃している。
 守備に関しては、おそらく石原広教には「攻撃3対守備7」の割合でプレーするように話しているのだろう。したがって、SBが高い位置をとるのは、左のポジションにいる選手になる。こうしたやり方は、マチェイ・スコルジャ監督か、攻撃担当コーチからの指示だろう。選手は首脳陣の指示に従って、的確にプレーをしているように見える。
 記事後半では、23分の浦和のコーナーキックの場面から見ていこう。

(2)へ続く
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