■「要求するときは要求しないといけない立場」

 長野県出身の松坂氏は、大学卒業後に埼玉県のサッカー協会で働いていた。それが縁あって、今は川崎フロンターレのために身を粉にしている。
 本人は「僕はそんな選手と仲良くっていう人間じゃない」と話すが、それも、「運営だから、距離が遠くもないし近くもないのが一番いいのかって」という思いがあるから。
「言うときは言わないと、要求するときは要求しないといけない立場がある」
 そう言葉にするように、関係が近いことでやりにくさも生まれる。
「特に試合前の集中しようとしている時間の選手からすれば、”もうロッカーから出て”“時間だよ”なんてあんまり言われたくないじゃないですか。でも、それを言わなきゃいけない」
 もちろん、チーム愛は強い。自分のことを「ドライ」と話すことが多い中でもフロンターレへの想いを聞くと饒舌になるだけに、そこを突っ込むと、思わず笑顔で「どんどんどんどん好きになっています」と明かすのだ。
 準々決勝で勝ったあとの笑顔も印象的だった。話しかければ、「次が楽しみですね。次に行けるんだって。(準々決勝で)終わりたくなかった」と満面の笑みで言葉を発してくれた。
「チームがちょっとでもいい方向に行けるように、自分が力になれたらなぁって」
 そうはにかむ松坂氏が、これからも見えないところで、そして見えるところでチームを支え続ける。
(取材・文/中地拓也)
【その10「佐藤弘平広報」へ続く】

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