■自身の体験に裏打ちされた「選手が困らないため」

 ただし、ブラジル人選手の“トライ”にヒヤヒヤしたこともある。ある年にブラジル人3選手が来日した翌日に、「その辺に夕飯を食べに行く」と言って出かけたが、なんと海老名駅まで出かけていたというのだ。トライを容認する中山通訳も、「元気なのはいいことなんですけど(苦笑)」と当時を振り返って困惑交じりの表情を見せる。心配はあるものの、トライしてくれたことへの気持ちもあるからだ。
 そうしたトライは中山通訳自身の体験にもよる。ブラジル・サンパウロ州に留学した際、手伝ってくれる人はいなかったために、何でも自分でやるしかなかった。それゆえに、早く生活に溶け込むことができたし、新しい文化を楽しめた。
「選手が困らないため」
 その言葉を胸に抱きしめる。
 ちなみに、先述した3選手とは、レアンドロ・ダミアンジェジエウマギーニョのこと。中山通訳は、「ダミアンがいたから冒険したんだと思います。ピッチの上でだけでなく、常に彼はとても勇猛果敢ですから」
 通訳という役職を超えて選手を思う中山通訳。フロンターレの歴史を刻んできた多くの外国籍選手の活躍と成長には、大きな存在がある。
(取材・文/中地拓也)
【その4「石野智顕GKコーチ」へつづく】

(4)へ続く
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