【J1川崎を取材して感じた「育てる力と心」とは(3)】「選手が困らないため」と近くで見守る中山和也通訳。自身の体験を元に、外国籍選手をチームに馴染ませるための「2つの意識」とはの画像
川崎フロンターレの中山和也通訳。サポーターをあおるなど情熱的だ 撮影:中地拓也
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 外国籍選手を最も近い立場で公私にわたって支えているのが通訳という仕事。ポルトガル語の中山和也通訳は、川崎フロンターレに所属して長い。

 選手に近い場所で潤滑油となっているが、同時に、選手個々について深く思いを巡らせている。言葉を訳すだけでなく、外国籍選手を日本に、そしてチームに馴染ませることも仕事だからだ。
 何度か、中山通訳にブラジル人選手の日本慣れについて聞いたことがある。その中で、早くチームに溶け込ませるために意識していることが2つあった。
 1つは、“アイスブレイク”することだ。異国に初めて来る選手は、来日直後、ナーバスになってしまう部分もある。だからこそ、あえて「グイグイ行く」。そしてアイスブレイクを自ら行っていくことで、他の人ともコミュニケーションを取りやすい環境を整える。
 もう1つは、何でもやりすぎないこと。中山通訳は説明する際に「スパルタ」という言葉を使うが、けっしてその言葉通りの強いものではなく、食事に行っても、注文を本人にさせてみるのだという。メニューをどうやって調べるか、注文する際にどうすればいいか、「その場で注文を代わってあげても、一人で来た時にできないと本人が困るんですよ」と話すからこそ、トライを促す。
 だから、新しくやってきた外国籍選手に渡す飲食店リストのようなものも用意。パスタならここ、ステーキならここといった具合に、どこに行けばどんなものが食べられるのかがまとまっているのだ。しかも、日本への慣れ方に応じてその“ランク”もある。サッカー選手に馴染み深い「焼肉」だが、ブラジル人選手にとっては難易度が高く、教えるタイミングも見計らっている。

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