■キャプテン時の想いがつながった大会
町田戦の前半、橘田は相手選手と接触すると苦悶の表情を浮かべてそのままピッチに座り込んだ。そのときに感じたことを聞けば、「個人的に少しプレーも良くなってきた中でのけがだったので、とりあえず悔しい気持ちが一番でした」としたうえで、ACLEファイナルズの出場に出られないだろうなということが浮かんだという。
また、「(治療の)最初の段階で(出場は)無理かなというふうに思ったんですけど、トレーナーの方だったり、多くの方がいろいろやってくれたおかげでここまで来れました」と話すように、診断よりも早く回復してきた。
橘田は23年にキャプテンを務めた。白星もなかなか詰めない苦しいシーズンにあって、最後に掴んだのが天皇杯のタイトル。それだけに特別な思いもあるのではと尋ねると、「多くの方の力で出れる大会ですし、個人としてもすごい思い入れがありますし、この大会でタイトルを取れたら一生忘れられないものになる」と話す。
元チームメイトで親友の遠野大弥とは同乗したチャーター便機内でも話したという。川崎がアルサッドに勝ち上がれば、その遠野大弥擁する横浜F・マリノスか、あるいは、世界的名プレイヤーのクリスティアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルと対戦する。小森すみ恵さんからどちらと戦いたいかと聞かれると、「さすがに、さすがに……」と笑顔で間を空けて「ロナウドです(笑)」と話したが、どんな対戦相手であっても目指すは勝利だ。
橘田健人にとって特別な思いを乗せたこのサウジアラビアのファイナルズ。そのサッカー人生に特別なメモリアルを刻むための準備は整った。
(取材・文/中地拓也)