■新しい川崎の「スタイル」とは
3月12日のACLエリート、ラウンド16では川崎は上海申花(中国)相手に4ゴールを奪って快勝した。
アウェーで0対1で敗れた後の試合だけに、勝たなければいけないのと同時に、先に失点を喫したりしたら非常に難しい展開になってしまう。
そのため、ボールを握る時間が長くなったものの、川崎の戦い方は基本的に慎重なものだった。
中盤でパスをつなぎながら、両サイドに丹念にパスを散らし続ける。相手の守備陣をスライドさせながら、同時に危険な位置でボールを失うリスクを最小化しようという戦い方だった。
だが、同じようなリズムでパスを散らすだけでは、なかなか決定機は作れない。
そこで時折、前線で裏のスペースを狙って走り込むマルシーニョをターゲットにロングボールを入れるような変化もつけていった。
そして、先制点をもたらしたのは、右サイドバックの佐々木旭の個人技だった。ドリブルで持ち込んだ佐々木はカットインして、相手DF2人の間に小さな隙を見つけると、そこから左足で無回転のシュートを決めてみせた。
佐々木は、エリソンによる2点目もアシストし、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれて記者会見の場に登壇した。序盤戦でなかなか得点が生まれなかった時間帯についての質問を受けると、佐々木は「チャンスを作り続けたことがジャブのようになっていた」と語った。
長谷部監督も「丁寧に、ミスなく、攻撃回数を増やす一方で、個人能力を生かして多くの攻撃の方法で点を取る」と語る。
ボールを失わない慎重さと、大胆な攻撃のバランス。それが確立できれば、新しい川崎のスタイルができてくるのだろう。