後藤健生の「蹴球放浪記」第256回「イングランド最北の地でフットボールの神髄に触れる」の巻(1)現代サッカーとは違う「殴り合い、死者も出る」フットボールが行われる街への画像
プレミアリーグ、サンダーランドのチェルシー戦の入場券。提供/後藤健生

 イギリスと言えば、フットボールの母国だ。当然、蹴球放浪家・後藤健生も、何度も足を運んでいる。イングランド最北の地では、「フットボールの神髄」に触れることができた。

■つかみ合い、ケガ人も出る「フットボール」

 イングランドのアニックという街に行ったときの出会いは本当に偶然でした。

 スコットランドと境界を接するイングランド最北部、ノーサンバーランド州北部にある人口が7000人ほどの、ノーサンバーランド公爵パーシー家の城下町です。

「Alnwick」と書いて、「アルニック」と読みます。

 どうして、わざわざそんな田舎町に行ったのかというと、そこでは今でも中世以来の伝統的なフットボール(民俗フットボール)が行われていると聞いたからでした。

 イングランドやスコットランドなどでは、中世から「フットボール」という名の遊びが行われていました。

 基本的にはボールなどを相手陣地に運び込んだら勝利という遊びですが、現代のサッカーのような厳密な(時には厳密すぎる)ルールなどはなく、たいていは大勢の住民が参加して行われます。畑でも、民家の庭先でもおかまいなし。ボールを運ぶ方法も投げてもいいし、蹴ってもいいし、抱えて運んでもいい。ボールを奪い合うときにはつかみ合い、殴り合いも発生。大勢のケガ人、時には死者が出ることもありました。

 政府はこの遊びを何度も禁止しますが、廃れたことはありませんでした。

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