■「ボールの循環のところが気になっていた」

「知念に少し痛みがあったので前線に置くことを選択しました。優磨に関しては、左サイドをやったりと、いろいろなところをやってもらった。ボールの循環のところが気になっていたし、全体が少し張り出してボールを受ける選手がいなくなっていたので。彼はもともと後方まで下りていくのが好きな選手。ボランチにして、そこから起点を作ることはできると思った。ただ、そこは結果論ですね」
 指揮官自身がこう説明したように、ある意味、ひらめきの部分もあった配置変更。これが最終的に奏功する。鹿島は後半アディショナルタイムに右サイドの遠目の位置でFKをゲット。これを舩橋が蹴り込み、植田直通が競り、鈴木優磨がキープし、左外に開いた植田にパス。そこから折り返しが中に入り、DF3人の間にスッと入り込んだ知念がヘッド。これが見事にネットを揺らし、起死回生の同点弾を奪うことに成功したのだ。
 結局、1-1でタイムアップの笛。鹿島は負け試合を引き分けにし、勝ち点1を上積み。首位で代表ウイークの中断期間を迎えることになった。
 誰もが驚くボランチ起用に鈴木優磨は「やっと本職をやりました」と冗談交じりに笑顔を見せたが、確かにこの試合の後半を見る限りでは、ボールを収めて全体を循環させられるのは彼しかいなかった。指揮官の見る目は間違っていなかったということになる。
「選手にはいろんな役割を幅広くやれるようになってほしい」と鬼木監督は鹿島に赴いてから言い続けているが、固定概念を取っ払った選手の使い方が随所で見られるのは事実だ。ヴェルディ戦からの小池龍太の右MF起用もそうだし、時間帯によって濃野公人と小池のポジションを入れ替えたりもする。昨季までは主に2列目要員だった樋口をボランチに据えたこともそう。そういう”鋭い見る目”が指揮官を名将へと押し上げたのだろう。
 大胆采配によってホーム無敗記録もリーグ新記録の26に伸びた。このアドバンテージをどう今後に生かしていくかが肝要だ。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

(2)へ続く
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