■「チームにとってのベストは何か」

 後半も展開は変わらない。井上と新保海鈴や、鈴木冬一とジョアン・パウロによるサイドでの勢力争いは局面ごとに見応えのあるものだったが、いずれも拮抗していたため、試合の行方を左右するほどの差が、そこで発生することはなかった。
 終盤に差し掛かると、流れの中から得点しそうなのはマリノス、セットプレーから得点しそうなのは横浜FC、という状態に。
 ようやく互いの攻撃がゴールに近づくようになっていった。
 マリノスはヤン・マテウス、エウベル、ジャン・クルードといった外国籍の選手たちを途中投入したが、横浜FCはゴール前に人数をかけて守り、彼らの「個」を発揮させず。
 エウベルは低い位置からのプレーを余儀なくされ、マテウスは内側への侵入を許されなかった。
 横浜FCは守りを優先させながらも、マリノスの攻撃を大きく跳ね返し、セットプレーの場面で櫻川ソロモンの高さを使って最後まで勝利を目指した。結局、朴一圭と市川暉記の両ゴールキーパーがゴールを守り抜き、スコアレスのままでのタイムアップとなった。
 タイムアップの瞬間、マリノスサポーターからは大きなブーイングが起こった。試合後のあいさつ中もブーイングは止まない。
 ホームのダービーで初めて勝てなかったことに加え、シーズン開幕から、すべての試合で攻撃力を見せられていない、チームに対しての不安と不満が渦巻いていた。
 スティーブ・ホーランド監督は守備を整備しているが、リーグ戦に加えてACLEと、連戦続きのために練習時間が限られ、攻撃とのミックスが思うように進んでいないように見える。
 エウベルは「監督の哲学は尊重すべきもので、自分たちが適応し、実行していくべきだ。ただし、結果が出ず、時間が過ぎてしまうのならば、そのときは哲学がありながらもチームにとってのベストが何なのかを見ることも必要だと思う」とコメント。
 この厳しい時期を抜け出すことはできるか。そして、抜け出すためには、どのような戦い方が必要なのか。昨年までの攻撃の下地があること、強力な個の力を備えていることは、チームが好転するための支えとなるのか。
 3連勝で首位と絶好調・湘南との一戦が、ターニングポイントになるかもしれない。横浜ダービーはスコアレスドローに終わった。

 

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