■将来、「独立」することは
グリーンランドには、少なくとも4500年前から人類が居住した痕跡が残っているが、この氷だらけの島に「グリーンランド」という冗談のような名前をつけたのは、アイスランドのバイキング「赤毛のエリク」という人物だったという。986年(日本では平安中期)、ノルウェー人を含めた人々が上陸し、入植地をつくった。入植希望者にとって魅力的な地名にしようと「緑の土地」と名づけたと言われている。当時は地球の温暖期で、エリクが上陸した島の南西沿岸部は、確かに緑で覆われていた。
厳しい気候にアイスランド人たちが入植をあきらめて去った後、グリーンランドはイヌイット(かつては「エスキモー」と呼ばれていた)だけが狩りをして暮らす土地となっていた。16世紀初頭にはポルトガルがグリーンランドを探検して「アジアへの近道」を探ったが、北極海の氷に阻まれて失敗。約100年後にデンマークが数次にわたる探検隊を派遣、1721年に正式に領土とした。
その後、グリーンランドは1979年に「自治権」を獲得し、現在ではデンマーク王国の一部としての自治政府が置かれ、2009年以降は政治的な権限と責任は「グリーンランド政府」に委ねられている。デンマークは欧州連合(EU=当時はEC)加盟国だが、グリーンランドは住民投票を経て1985年にECを離脱した。ただし、グリーンランドの住民はデンマーク本国の国籍と市民権を持つため、EUの市民権も持っている。
もちろん、独立の動きも古くからある。約5万7000人の住民の9割は「グリーンランドイヌイット」であり、石油や鉱物など、未開発の資源も多いため、将来、独立することは十分に考えられる。