■グスタフソンとの関係性は

「戦術的な部分は僕は大事だと思うし、監督はそういうことを言うと思うけど、やっぱり僕はそういう部分じゃなくて、戦えたりとか、90分みんなで戦い合うチーム力、そう言うところが今年は必要になってくると思う。ピッチに立つ11人だけじゃなくて、ここにいる30人で戦うことがすごく大事だと感じたから。そこを一人残らずみんなで押し上げていければ」
 そう語る渡邊は練習のゲームでも率先して声を出し、周りを動かして、合間には周囲の選手とコミュニケーションを取ったり、スコルジャ監督やコーチングスタッフと確認する。渡邊はボールを動かしながら、幅広く動いてバランスを取り、タイミングを見て前に飛び出していく。そうした渡邊の動きに生かされる形で、ボランチのもう一人の主力であるサミュエル・グスタフソンが持ち前の展開力を発揮して、長短のボールを蹴り分ける。昨年からグスタフソンのパスは浦和でも際立っていたが、彼が良い形でボールを持てるかどうかはどこか偶発的なところがあった。
 しかし、キャンプから取り組むビルドアップ、そして渡邊との関係において、全体でボールを動かしながら、グスタフソンを明確な攻撃のスイッチ役として生かし、それを渡邊が柔軟にサポートする関係ができつつある。もちろん、昨年からの継続路線で、守備のベースが高いヴェルディに対して、つなぎに苦しむシーンも見られたが、取り組んでいることから逃げずに続ける姿勢が見られたことはポジティブなことだ。
 戦術というのはチームで作り、磨いていくものだが、やはり軸になる選手は必要だ。現在の浦和では間違いなく、それが渡邊であり、その存在によってグスタフソンというスペシャルな個性がより生かされる。”ダブル8番”ではあるが、その中で渡邊がバランサー、グスタフソンがトリガーという大枠の分担があることで、周りの選手も共有しやすいだろう。もちろんボランチには新加入の松本泰志、そして怪我により、現在は全体練習から離れている安居海渡や柴戸海と言った選手もいるが、シーズン開幕戦に向けて、渡邊とグスタフソンがボランチのファーストセットになって行きそうだ。
(取材・文/河治良幸)
(後編へ続く)

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