■有料テレビの「キラーコンテンツ化」で…
Jリーグが発足した当時の状況は、まったく違っていた。
今では信じられないことだが、1990年代のはじめ、日本は「世界第二の経済大国」であり、将来は世界最強の経済大国になるとさえ言われ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なる本がベストセラーとなっていた。
創設当時のJリーグの各クラブのバックには、その「世界第二の経済大国」を牽引する巨大企業がついていたので、Jリーグ・クラブはヨーロッパのクラブに匹敵する財政力があったのだ。そのため、ブラジルやアルゼンチンの現役代表選手たちが何人もJリーグでプレーしていた。
ヨーロッパのクラブの経営規模も、現在に比べたら小さなものだった。
クラブのオーナーが個人的財産で運営したり、オーナー企業がスポンサーになる程度のクラブが多かったのだ。
第2次世界大戦後ずっと独裁体制化にあって、西側諸国から経済制裁を受けていたスペインやポルトガルは経済発展から取り残され、貧しいままだった。その間、レアル・マドリードやバルセロナのような強豪サッカー・クラブは、西側のクラブに選手を放出することによって貴重な外貨(米ドル)を手にすることができたので、クラブ自体が国内の大企業より裕福な状態すらあった。
そんなクラブが相手なら、トヨタや日産、三菱といった大企業が後ろ盾になったJリーグ・クラブは互角に勝負することができたのだ。
だが、その後、ヨーロッパではサッカーが有料テレビのキラーコンテンツとなることで、莫大な放映権料が流入することになる。そして、サッカーがビッグビジネス化すると、中東や東ヨーロッパで天然資源を牛耳っている大富豪やアメリカの投資ファンドなどから巨額の投資を受けるようになって、欧州のクラブはさらに裕福になっていった。(3)に続く。