■熱戦が減る「最大の理由」

 さて、史上最高の大観衆を集めた中で、非常にハイレベルな決勝戦が繰り広げられたので「終わり良ければすべて良し」という気持ちにもなるが、こういうハイレベルの試合をもっとたくさん観たかったという気持ちも強い。

 今大会では、僕は10試合をスタジアムで観戦したが、本当に素晴らしいゲームだと思えたのは、決勝戦のほかには3回戦の流通経済大柏対大津の一戦だけだった。

 大津は高円宮杯プレミアリーグWESTで優勝し、Uー18年代の最強チームを決めるプレミアリーグ・ファイナルではEAST優勝の横浜FCユースを下して優勝しており、大会前から優勝候補に挙げられていたチームだった。

 こちらも、テクニックと球際の激しさを両立させたスリリングな攻防が90分間続く大熱戦となった。

 こうした試合を、もっと観たいのである。

 だが、現実にはそうではない試合が多くなってしまう。もちろん、観戦する試合がいつもそんな熱戦になるというのは贅沢な希望なのだが、この年代で内容の濃い試合が繰り広げられれば、日本のサッカーの将来はさらに明るいものになるはずだ。

 好試合ばかりでなくなってしまう最大の理由は、参加校間の実力差だ。

 最近の高校サッカーは地域間格差は小さくなっている。かつて、静岡県勢が圧倒的な強さを誇っていた時代が長かった。1970年代から90年代くらいの話だ。清水東や清水市商、静岡学園、そして古豪の藤枝東などが切磋琢磨しており、「静岡県大会は全国大会よりレベルが高い」などと言われていた。

 その前は、埼玉県の浦和勢と藤枝東を中心とする静岡勢が競り合っていた時代もあった。

 浦和でも浦和高校をはじめ、浦和市立、浦和西、浦和南など強豪校が競り合うことで力を上げた。さらに昔にさかのぼれば、第2次世界大戦をまたいで「広島の時代」もあった。

 広島、埼玉、静岡が高校サッカーの「御三家」と呼ばれていたのだ。

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