■「凡事徹底」「年中夢求」「24時間をデザインする」

「凡事徹底」「年中夢求」「24時間をデザインする」といったスローガンを耳にしたことのあるサッカーファンも少なくないだろうが、平岡TAは言葉を巧みに使いながら選手のモチベーションを高め、自身の限界を超えさせようと導いてきた。そのアプローチは育成年代で高く評価されている。
 そんな大津も壁にぶつかったことがあった。最たるものが、2023年10月に表面化した「いじめ問題」だ。「2022年1月に当時1年生だったサッカー部員の男子生徒が全裸で土下座をさせられ、その様子を撮影されるいじめを受けていた」というショッキングなニュースが流れ、熊本県教育委員会が「いじめ防止対策推進法に基づく重大事態」に認定。一時はサッカー部が活動停止に追い込まれたのだ。
「僕は35年間、高校サッカーの指導現場に携わってきましたが、このような出来事に直面するのは初めて。生徒のサインに気づかず、寄り添ってあげられなかった。申し訳なく、心から猛省しています。自分が今まで積み重ねてきたものが音を立てて崩れるくらいの衝撃を受けました」と名将も神妙な面持ちで語っていた。
 そこからの1年間で彼らは選手や保護者とのコミュニケーションをより密にし、危機管理体制を強化するなど、安心安全の部活動実現に尽力。教え子の山城朋大監督らとともにできることを全てやってきたのだ。

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