■抜擢して伸びた濃野公人

 ポポヴィッチ監督が抜擢したもう1つの成功例が濃野公人。関西学院大学から今季加入したルーキーは開幕スタメンを確保し、そこから不動の右サイドバック(SB)へ飛躍。右MFに定着した師岡柊生とタテ関係も試合を重ねるごとに磨きがかかり、前半戦だけで5点をゲット。重要な得点源となっていったのだ。
「左の安西幸輝仲間隼斗で崩して、右の濃野が決める」というのが、夏場までの鹿島の重要な攻撃パターンになっていたのも事実。新外国人FWチャヴリッチ加入効果もあって、確かに前半戦は鈴木優磨に頼らない得点パターンができたという手ごたえもあった。
 しかしながら、7月に佐野が移籍し、チャヴリッチが負傷。このタイミングで三竿健斗を呼び戻したものの、夏の中断期間明けの8月以降は勝てなくなってしまう。2巡目になると対戦相手も当然研究してくるから、目濃野・師岡のタテのラインが止められるのも想定内だったはず。だが、ポポヴィッチ監督は新たな得点パターンを構築しきれず、結局は優磨依存に戻り、ズルズルと行ってしまった印象が強かった。
 迎えた9月14日のサンフレッチェ広島との上位対決。知念と17歳の徳田誉がチームを救い、何とか踏みとどまったところまではよかった。ところが、直後の天皇杯で神戸に苦杯。さらに9月28日の湘南ベルマーレ戦で2-0から2-3にひっくり返されて敗れたのが致命傷になった。そこで濃野が右ひざ半月板を負傷し、今季絶望となったのも痛かった。
 追い込まれた指揮官は、続く10月4日のアルビレックス新潟戦で3バックへのシフトという苦肉の策を講じ、4-0で圧勝したものの、クラブは吉岡宗重FDとともに更迭という大ナタを振るう決断を下したのである。

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