後藤健生の「蹴球放浪記」第241回「ブラジルと韓国に共通する素晴らしい習慣」の巻(2)隣国でも減った「席を譲る」若者と、日本が失った「敬老精神が生きる」サッカー大国の画像
初めて韓国に行ったのは、1982年の韓日定期戦だった。提供/後藤健生

 蹴球放浪は、文化を学ぶ旅でもある。国によって違う習慣も興味深いが、南米とアジアが思わぬ形でつながることも。蹴球放浪家・後藤健生の中で、ブラジルと韓国が重なったのは、2018年のW杯ブラジル大会。空港に向かうバスの中での突然の出来事がキッカケだった――。

■東京では「50年前」に廃れた

 ただ、そうした風習は社会が近代化し、都市化するとともに、アッという間に廃れてしまいます。

 座っている人が荷物を持ってくれるという習慣は、日本でも昔はあったようです。僕も子どもの頃、祖父と電車に乗っていてそんな経験をしたような記憶がかすかに残っています。ただ、少なくとも東京では50年前までにはそういう習慣は廃れてしまったようです。

 先ほど、韓国でも同じようなことがあったという話をしましたが、今ではそんな習慣もなくなってしまったようです。

 昔の韓国というのは、人間関係が非常に稠密(※ちゅうみつ=ギッシリ詰まっている様)な社会でした。「友達」というと、朝は仕事に行く前に一緒に早起き蹴球をして、会社が終わると毎晩のように夜中まで飲んでいて、家族と一緒の時間よりも長い時間一緒に過ごすことが普通でした。

 今は、すっかり「家族第一」になっているようですが……。

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