■天皇杯が今後も「愛される」ために
5月下旬は、イングランドで最も美しい季節かもしれない。長く陰鬱な冬が去り、不安定な気候の4月が終わり、空は青く輝き、日は日々、長くなる。街路樹の緑も濃くなり、人々は軽装となって生きている喜びを体いっぱいに感じる…。
そうしたすべての喜びの結集が、「カップファイナル」なのである。1か月前に決まった決勝進出クラブのサポーターたちはクラブに割り当てられる入場券を手に入れ、ロンドンに向かう予定を立て、心待ちにする。その他のクラブのサポーターたちも、自クラブのシーズンの最後の数試合に声援を送りつつ、パブに行くと「FAカップ決勝はどうなるか」という予想で盛り上がる。
FAカップの決勝戦をリーグ閉幕の1週間後の土曜日午後3時に固定したことで、この試合がイングランドのサッカーシーズンの最後を飾る試合となり、「文化」と呼べるほどの大きな関心を集めてきたのである。
Jリーグが「秋春制」に移行するのに合わせて、天皇杯も「5月下旬、Jリーグ閉幕の1週間後の週末」に固定したらいいと思うのは、このFAカップ決勝戦のイメージがあるからだ。日本社会の「年度」をまたぐ形になり、いろいろと難しい問題もあるだろうが、5月下旬に決勝戦ができるよう、1回戦からの日程を考える必要がある。
「オールドファン」のひとりとして、たしかに「元日国立決勝」にはノスタルジーがある。日本の天皇杯ならではの、世界の他にはない伝統であり、大切な文化であったことを忘れてはならないと思う。
しかし、同時に、この21世紀に天皇杯が心から愛され、その決勝戦をサッカーファンに心待ちにされる試合にするためには、「5月、Jリーグ閉幕の翌週週末開催」を固定し、その「カップファイナル・デー」を、これから「46年間」を超え、100年、150年と続く日本サッカーの「核」の試合にしていくべきではないか。
少なくとも、毎年フラフラと日程が変わり、「えっ! 昨日が天皇杯の決勝戦だったの?」などという状態は、変えなければならない。