後藤健生の「蹴球放浪記」第238回 「情報省の女性官僚が“野菜は食べないで”」の巻(2)アジア杯を懐かしんで「ハノイ庶民街」へ、警告を無視して食べた「フォーの上のパクチー」の画像
ベトナムのビザ。最上段「CONG HOA……」の文字は、漢字では「共和社会主義越南」となる。提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は世界を渡り歩く。時には、疑惑の目を向けられることもある。ジャーナリストを警戒する国もあるからだ。そうした人物とのコミュニケーションも、放浪には欠かせない、醍醐味なのだ。

■ベトナムから消えた「漢字」表記

 アジアカップの(そして、オリンピック予選の)会場となったのは、ハノイのミーディン国立競技場です。2003年に完成した、約4万人収容の陸上競技場です。

 タクシーの運転手に伝えるときは、「サンヴァンドン、ミイディン」と言えばいいわけです(もちろん、声調に気をつけて)。「サンヴァンドン」がスタジアムという意味です。

 ちなみに、漢字で書くと(〓運動美亭)となります。「美亭」が「ミイディン」になるのは、なんとなくお分かりでしょう。「〓」で表したのは「隣」という漢字の「こざと扁」を「土扁」に変えた文字です。ベトナム語ではたとえば「博物館」は「館・博物」という語順になるのです。たとえば、試合前に「君が代」が演奏される前には「コッカァ、ニャトバン」と場内アナウンスがありますが、これも、漢字で書けば「国歌日本」の音読みです。

 ですから、「〓運動」は「運動場」という意味になります(「運動」が「ヴァンドン」という発音になるのも、なんとなくお分かりでしょう)。

 もちろん、現代のベトナム語はフランス人宣教師が発明したというローマ字表記だけが使われていますから、普通のベトナム人は漢字はまったく読めません。「〓運動美亭」も、ローマ字では「San van dong Мy Dinh」となります(実際には、これに声調記号などがいっぱいついています)。

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