選手として3年、スタッフとして10年の計13年を過ごした地から旅立つ男を送り出す、惜別の『カモンロッソ』にファンが涙している。
11月3日にえがお健康スタジアムで行われたJ2リーグ第37節で、ロアッソ熊本が3−1でベガルタ仙台に快勝を収めた。熊本にとっての今季本拠地最終戦。試合開始2分で失点したが、エースの石川大地が前半16分と後半16分にゴールを決めて逆転すると、後半33分に大崎舜がダメ押しの3点目を決めた。
そして試合後、熊本のゴール裏サポーターへの挨拶で、選手たちから背中を押される形で拡声器を握ったのが、藤本主税ヘッドコーチだった。徳島市立高校から1996年にプロ入りして以降、数々のクラブを渡り歩いた元日本代表MFは、現役最後に過ごした熊本の地に引退後も残り、下部組織からトップチームのコーチまでを長く務めてチームの強化に尽力した。今季も大木武のもとでヘッドコーチを務めて来季の続投オファーがあったが、新たな一歩を踏み出すために今季限りでの退団が発表されていた。
その藤本氏が熊本在籍の現役時代に北嶋秀朗氏と相談して考案したのが、勝利後に選手とサポーターが一体となって踊って歌うチャント『カモンロッソ』だった。そしてこの日、拡声器を握った藤本コーチは「これまでがこれからを決めるのではなく、これからがこれまでを決める」など、熱い言葉を伝えた後、自らが音頭を取り、選手、サポーターと一緒に『カモンロッソ』を歌い上げた。