「ごめん」
ロッカールームの床にマルシーニョの謝罪の言葉が響いたのは、川崎フロンターレと上海申花がぶつかった10月23日のACLE第3戦のハーフタイムだった。試合開始直後のレッドカード。苦しい前半を戦った選手たちに、ブラジル人アタッカーが頭を下げた。
数的不利の中で前半24分に先制点を献上するが、それでも失点1で前半を折り返す。苦しい状況で逆転を目指すため、川崎の選手は後半の戦い方を変えるためのミーティングに入った。
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4-2-3―1のシステムでスタートした川崎は、それを前半5分で4-4-1に変更せざるを得なくなった。左サイドに入っていたマルシーニョが、相手選手の足を踏みつけて一発退場となったのだ。
「とにかく自分たちがボールを徹底して握ることを考えました」と鬼木達監督が試合後に明かした“幻の戦い方”は、開始5分で消えた。
「相手の攻撃力を出させないという意味で、自分たちが攻撃的に常に戦うことが重要なので、まずそのプランで行きましたけども、1人少ないという状況で難しくなった」
指揮官がこうも語るように、一枚のレッドカードによってゲームプランは崩れ去ったのだ。
■「1人で持ち運ぶプレーを増やしていこう」
ハーフタイムを過ごした川崎は後半、2つシステムを用いてチャンスをうかがった。鬼木達監督によれば、「4-4-1から4-3-2の変形のような形で押し返していく形を常に作りながら、その中でだいぶ慣れてきた感じはあった。慣れる時間には十分だったと思いますので、そこである程度いけるところまでいこうという形をとりました」と言う。
「後ろから丁寧につないでいこう」と、自分たちの得意な形に持ち込もうと選手に伝えた。
「1人で持ち運ぶプレーも増やしていこう」と、前半を振り返ったうえでの指示も出した。
慣れたうえで、反撃を模索する。85分間を数的不利で戦うのだ。全局面をフルパワーで行くわけにはいかない。
「最後、点を取り行くっていうところではパワーのある選手を入れ、システムも4-4-1プラス4-3-2の変形を続けていましたが、やっぱりそこのところはもう1失点してしまうとなかなか難しいので、ギリギリまで我慢しながらでした」
こう話す指揮官は、「最後のところでもう少し4-3-2の完全な固定型でもいけたのかな」と話したが、選手のコンディションや試合状況も考えたうえで最適な形を探り続けた。