■求められる現場の陣容の整理と修正
ただ、鹿島やセレッソ大阪、松本山雅など複数クラブで指導し、パリ五輪代表でも修羅場をくぐってきた羽田コーチ以外はみな経験不足なのは紛れもない事実だ。
まず中後コーチは昨年、JFA公認S級ライセンス講習会を受講したばかり。2018年から東京ヴェルディのアカデミーで指導はしていたものの、トップチームの指導に携わるのは今年が初めて。そういう人材にいきなり指揮官を任せるのは「ハードルが高い」と見る向きがあるのも当然だ。
鹿島は2022年にもレネ・ヴァイラー監督(現セルヴェット)更迭直後、プロチームを率いたことがなかった岩政大樹監督(前ハノイFC)の昇格に踏み切っている。その結末はご存じの通り、わずか1年半での事実上の解任。最終順位は5位と傍目から見ると悪くなかったが、岩政監督は無冠の責任を追うことになった。
この時、「OBの使い捨てはやめてほしい」といった声がSNS上でも数多く散見されたが、中後コーチが同じ道を辿るようなことがあってはならない。いかにして現場の陣容を整え、修正を図っていくのか。まだAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を目指せる位置にいる今だからこそ、彼に託すもの、目標設定を今のうちに明確にしておく必要がある。
中田FDにしても、2014年限りで現役を退いた後、クラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO)としてスポンサー、サポーター、行政機関などとクラブをつなぐ役割を担ってきた。本人もビジネス・マネージメント領域に進むつもりで、筑波大学大学院で学んだほどだ。
約10年間、現場に携わる意思はなかったようだが、吉岡宗重前FDに偏りがちだった強化部門のテコ入れ図るべきだと考えたクラブ側から昨年末に異動の話があり、本人も悩みに悩んだうえで受託した経緯がある。今季は強化担当として一歩を踏み出し、練習・試合に全て帯同し、チームの状態を逐一チェックしてきた。
そういう意味では、ランコ・ポポヴィッチ監督就任後のチーム状態を誰よりもよく分かっている人材と言えるが、いかんせん強化担当経験が少ない。そこには一抹の不安がないとは言い切れない。昨夏、鹿島入りした石原正康氏、今年から加わった山本修斗氏とともに「組織力」で苦境を乗り切っていくべきだ。