時間にして数十秒。しかし、前後半のキックオフ直前ならともかく、試合の真っ只中のピッチにおける光景としては、なかなか見られないものだった。
水戸ホーリーホックのホーム、ケーズデンキスタジアム水戸に乗り込んだ6日のJ2リーグ第34節。結果次第でJ1昇格決定もありうる一戦で23分に先制され、38分には追加点を許した直後。清水エスパルスはすぐに試合を再開しなかった。
ボールはすでにセンターマークに置かれている。喜んでいた水戸の選手たちも自陣に戻り、それぞれのポジションでスタンバイしていた。しかし、守護神の権田修一を含めて、清水の選手たちは自陣の中央に集まって円陣を組みはじめた。
試合中に行われた緊急の青空ミーティング。呼びかけたのはMF乾貴士だった。
「前半の残り時間もそれほどなかったですけど、しっかりと一度、気持ちを落ち着かせて話し合う方が大事かなと思ったので。あの場面では慌ててもしかたがなかったし、いったん集まろうと感じたので、僕がみんなを呼びました」
36歳の元日本代表MFを中心に何が話し合われたのか。乾が続ける。
「攻守の切り替えのところも遅かったし、2失点した場面も決してディフェンス陣だけの責任ではなかった。前の選手のプレッシャーのかけ方であるとか、ボールの競り際であるとか、原因は本当にひとつだけじゃなかったので」