■「一番苦しんでたんじゃないですか、悠樹が」に込めた想い
そんな瀬川も、次につなげる言葉には後輩への気持ちを込めていた。
「一番苦しんでたんじゃないですか、悠樹が」
練習後で汗に濡れる体をタオルで拭くのを止めてそう話し、「最初は(川崎で)主力として出て、でも、チームがうまくいかなくなって。自分のプレースタイルと真逆って言ったらあれですけど、どのチームベースでやってるとは思うんですけど走って戦って強度出してっていうところも(も求められて)」と、視線を遠くに投げながら慮る。
さらに、少し間を空けて「悠樹はそこにアクセントを加わられる選手。彼のサッカーセンスを出せるチーム状況というか、優先順位というか(がなかなか巡り合わなくて)。彼もすごい葛藤してたんじゃないかなと僕は思います」と気遣った。
瀬川自身、意識してかけた言葉はあったのか。率直に聞いてみると、「いやいや、そんな、何か……。“お前はうまいんだから”とかそういうのは言ってないです。特に」と答え、いじってあげたり、さりげなく「昨日の試合はお前だったな」などと、励ましてみたりしたという。
「悠樹はちゃんと話を聞ける選手なので、コミュニケーションは密に取りながら。活躍したときは声をかけますし、上で見ているときに悠樹がいいプレーしてたときは、1回だけですけどラインを入れたりしたぐらいですかね」
一回一回はあえて大きくしなかったが、細かく何度も、山本を支えたという。そしてその一つ一つが、新潟戦後の山本の感謝と涙へとつながった。