「え、俺? ないでしょ、聞くこと」
練習を終えてクラブハウスに戻ろうとする瀬川祐輔に、13分にわたって話を聞いた際の第一声は、目をきょとんとした不思議そうな表情から出たものだった。9月28日の午後12時46分。この日、どうしても背番号30に聞きたいことがあった。
その理由は、前日のJ1リーグ第32節、川崎フロンターレとアルビレックス新潟との試合にある。この試合で、山本悠樹が先発出場。エリソンのゴールをアシストするなど、ピッチで90分間躍動してみせた。
今季、ガンバ大阪から移籍してきた山本がフル出場したのは、これが今季2度目のこと。それも、3月9日の京都サンガF.C.に敗戦して以来で、J1リーグ戦の出場も8月17日が最後。この時も19分間しかピッチに立てず、ここまでの出場時間は738分に過ぎない。
その山本が試合後に、涙を浮かべて瀬川祐輔に感謝の言葉を並べたという。そして、「面と向かっては言えない」と照れながらも――。
当の瀬川は、山本に対してどう感じていたのか。それを聞きたかったのだが、瀬川はピンと来ていなかったようだ。だからこそ、冒頭に記した通り「え、俺? ないでしょ、聞くこと」の第一声が出て、続けて、山本の感謝について「え、ほんと? いいこといいますね(笑)」と笑わせてみせた。