【J1広島が驚異の10戦9勝で首位に。天王山で町田を破ったワケ (1)】川辺、中野、東、パシエンシアが守ったチームの約束事が得点に結びつく……「チームのなかで統一されていた」の画像
サンフレッチェ広島の中野就斗 撮影:中地拓也

 攻撃のスイッチを入れるロングボールが放たれてから、サンフレッチェ広島の先制ゴールが生まれるまでに要した時間はわずか10秒だった。

 ホームのエディオンピースウイング広島で、FC町田ゼルビアと対峙した28日のJ1リーグ第32節。勝ち点59で並び、得失点差で広島が首位に立って迎えた天王山は、開始3分でリードを奪った広島が最終的には2-0で快勝した。

 敵陣の右サイド際からボランチ松本泰志が放ったロングボールを、町田のDF林幸多郎が体勢を崩しながら頭ではね返す。もっとも、ここまでは想定内。その後の展開である約束を共有していたと、もう一人のボランチ川辺駿は明かす。

「自分たちがロングボールを蹴ってからのセカンドボールを、いかにして奪えるかがこの試合のポイントでした。セカンドボールはいつも意識していますけど、町田もけっこうロングボールを蹴る展開が多いので今日は特に重要でした」

 小さくなった林のクリアに、誰よりも早く反応したのは川辺だった。ボールの落ち際にワンタッチで右足を合わせ、右タッチライン際に陣取っていた右ウイングバックの中野就斗へパスを通した。必然的に町田の対応が後手を踏んだ。

 慌てて林が間合いを詰めてマークにつくも、すでに主導権は中野が握っていた。
「中野は両足で遜色なく蹴れるので、相手選手に当てなかったのが先制ゴールにつながった要因ですね。さらに中の選手たちもうまく動き出してくれたので」

 素早い切り返した中野が利き足とは逆の左足を一閃。ニアへ放たれた低く、速いクロスに今夏に加入した元ポルトガル代表のFWゴンサロ・パシエンシアが右足を合わせた次の瞬間に、日本代表GK谷晃生が守る町田の牙城に風穴が空いた。

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