現在、日本サッカーはトップのJ1リーグのみならず、あらゆるカテゴリーでレベルアップを示している。その中でも異彩を放つのが、関東リーグ1部の南葛SCだ。率いるのは、風間八宏監督。天才指導者とチームの冒険を、サッカージャーナリスト後藤健生がつづる。
■違和感を覚えた「ベンチの光景」
僕が風間監督就任後の南葛SCを初めて見たのは、3月10日。東京都チャンピオンシップ2次戦の1回戦だった。天皇杯全日本選手権大会の東京都予選である。対戦相手は東京蹴球団(1917年創設の日本最古のクラブ)。場所は駒沢公園の補助競技場だった。
見ていると、たしかに南葛SCのベンチには風間監督が座っている。日本を代表する名将といってもいい風間氏が、こんなスタンドもない競技場で指揮を執っているのに僕はまず大きな違和感を覚えた。
この試合、南葛SCは4対1で勝利したが、東京都リーグの東京蹴球団とはチーム力にかなりの差があり、順当に南葛SCが勝利した。とくに、印象的な試合ではなかったが、このとき、観戦に来ていた南葛SCに詳しい人に聞くと、風間監督はチームの始動とともに非常に熱心にトレーニングを行っているということだった。それを聞いて、僕は「それなら、筑波大学のときと同じように秋になったら、ちゃんとしたチームになってくるんだろうな」と思ったものだった。