日本のサッカー界は、着実に成長している。ワールドカップやオリンピックなど大舞台での活躍はもちろん、その進化は日々の活動にも表れている。数多くの選手たちを世界の舞台へと送り出す日本サッカー界の「育成力」について、サッカージャーナリスト後藤健生がリポートする。
■南野拓実、伊東純也がいなくなっても…
そして、Jリーグの素晴らしいところは、これだけ多くの優秀な選手を輸出しておきながら、リーグの空洞化を免れていることだ。
もちろん、「南野拓実や伊東純也がJリーグにいたら、どんなにスペクタキュラー(素晴らしい)なプレーを見ることができるか」とか、「三笘薫や守田英正、田中碧が海外に出て行かなければ、川崎フロンターレが凋落することはなかっただろう」とは思うが、では、彼らがいなくなってJ1リーグのサッカーがつまらなくなったかと言えば、そうとは言えないほど充実した試合を見ることができている。
優秀な選手が海外に進出していくと、若い世代の新しい選手が育ってくる。彼らが、さらに若いうちに(Jリーグでプレーすることなく)海外に出て行ったとしても、さらに下の世代が成長してくる。しかも、J1リーグだけでなく、下部リーグへも、強化の波が及んできている……。
考えてみれば、これは素晴らしい循環だ。
数年前まで、日本ではユース年代を卒業してプロ契約したばかりの19歳、20歳くらいの選手にプレー機会が与えられないことが問題になっていた。
だが、多くの選手がヨーロッパに渡っていったおかげで、Jリーグに入ったばかりの若手にも出場機会が与えられるようになった。
パリ・オリンピックではオーバーエイジ枠は使われず、さらに海外クラブに所属する選手の多くも招集できず、「U-23Jリーグ選抜」のようなチームが派遣されたが、彼らはグループリーグで3戦全勝という結果を残すことに成功した。
それができたのは、ユースからトップに昇格したばかりの選手でもJリーグのレギュラーとしてJ1リーグの試合を経験できる選手が増えたからだった。