正直に明かせば、三笘薫(ブライトン)はあきらめかけていた。右サイドで堂安律(フライブルク)がボールをもつ。逆サイドを三笘がフリーで駆けあがる。ウイングバックからウイングバックへ。青写真はなかなか具現化しなかった。
「クロスの質次第ではそこ(逆サイド)がフリーになったので、いつ来るかな、と思いながら走っていた。ただ、前半は3回くらい走っても来なかったので、今日は来ないのかなと思いながらも、最後の最後に自分を見てくれたのでよかった」
埼玉スタジアムで中国代表と対峙した、2026年の北中米W杯出場をかけた5日のアジア最終予選の初戦。日本代表が1点をリードして迎えた前半アディショナルタイムの47分に、三笘のフリーランニングが報いられる瞬間が訪れた。
右サイドから堂安がインスイングで放ったクロスが、美しい放物線を描きながらファーへ飛んでくる。ターゲットとなった三笘は満を持して宙を舞い、完璧なタイミングで頭をヒット。代表通算8ゴール目を鮮やかに突き刺した。
「自分たちがボールをもったときにはウイングのポジションを取って、高い位置で仕掛ける動きを練習から求められていた。ホームで絶対に勝ち点3を取らなければいけなかった試合で、ポジションがウイングでもウイングバックでも、自分自身に課されていた仕事は変わらない。チームの勝利に貢献できてよかったと思っている」
日本のアジア最終予選で歴代最多となる大量7ゴールを奪い、守っては中国をシュート1本だけで零封した試合後。森保ジャパンが6月シリーズから取り組む「攻撃的な3バック」で、左ウイングバックを担った三笘は自身に及第点を与えた。