試合に長く絡めていなかった自分が、ピッチ上でどのように立ち振る舞えばいいのか。141日ぶりの先発が確実視されていた8月31日のFC町田ゼルビア戦を前に、浦和レッズのMF小泉佳穂は悩める胸中を周囲に打ち明けている。
「そういうものだよ、プロの世界って」
今シーズン限りでの現役引退を表明しているFW興梠慎三とともに、弱肉強食の世界で胸を張っていけと背中を押してくれたのが群馬県の強豪校、前橋育英からの盟友であり、同じ1996年生まれで、誕生日も3日違いの渡邊凌磨だった。
今シーズンにFC東京から加入した渡邊と、全国高校サッカー選手権で準優勝した2014年度以来、実に10年ぶりにチームメイトになった小泉が感謝する。
「慎三さんにも凌磨にも同じ言葉をかけられて、完全に割り切りました」
そして渡邊もまた、ペア=マティアス・ヘグモ前監督が更迭され、昨シーズンに指揮を執ったマチェイ・スコルジャ監督が再登板する浦和で新たな役割を託された。
新天地では左サイドバックを皮切りに、ウイング、トップ下とさまざまなポジションでプレーしてきた。雷雨によってハーフタイムで中止になった8月24日の川崎フロンターレ戦ではトップ下で先発し、23分にゴールも決めている。
一転してポーランドに滞在中のスコルジャ新監督と話し合いの場をもった、池田伸康暫定監督から託されたポジションは、浦和では初めてとなるボランチだった。
「サイドバックではいろいろとありましたけど、ボランチに関してはやることはそれほど変わらないので、意識の問題だけだと思っていました。具体的には相手はどうせ蹴ってくるというか、ボランチを介さないようなサッカーをしてくるので、セカンドボールを拾うところと、そこでデュエルに勝つ戦略がありました」