■「選ばなきゃいけないタイミングを作り出そう」

 つられるようにエウベルの重心も傾く。必然的に広がったエウベルの股間を狙った大島のパスは、青写真通りに鮮やかに際のもとへと通った。右サイドで縦関係を組む状況が多い家長と、事前に話し合っていた作戦を際がこう明かす。

「相手が僕なのか、アキくん(家長)なのかを選ばなきゃいけないタイミングを作り出そうとずっと話していた。(大島)僚太くんはそこをしっかり見てくれるので、あとは僕たちが走って、空いているところへいかに押し込めるか、という形になる。見てくれる、という安心感がある部分で、僚太くんは本当にやりやすい」

 エウベルの股間を突いたパスに反応した際は、ワンタッチでクロスを放つ。ボールは危機を察知して戻ったDFエドゥアルドの足、畠中の体をかすめてゴール中央へ詰めてきた家長の前へこぼれ、冒頭で記した決定機につながっていった。

「誰にいつ、どんなパスを出したのかあまり覚えていないです。もうきつくて」

 試合後の取材エリアで、大島は思わず苦笑いを浮かべた。キックオフされた19時の気温が30.7度、湿度66%と不快指数がマックスの状況で、戦列復帰後で初めて3試合連続で先発。最長タイの78分間プレーした直後の偽らざる本音だ。

 試合はスコアレスで迎えた後半に、PKで先制したマリノスがその後も2ゴールを追加。必死の反撃に出るも、1点を返すにとどまった川崎の連勝は3で止まった。それでも、不振に苦しんだ前半戦に喫した黒星とは内容がまったく異なっていた。

(取材・文/藤江直人)

(2)へ続く
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