サッカーは美しいスポーツであるが、そうではない部分も存在する。審判に選手たちが執拗に異議を唱える場面も、そのひとつだ。観る者をげんなりさせる「サッカーの敵」とも言うべき試合のワンシーンを消し去る2つの方法を、サッカージャーナリスト大住良之が提言する。
■通達を無視して「試行」されたオンリー
Jリーグは、なぜ「キャプテンオンリー」を採用しないのだろうか。
今年3月の国際サッカー評議会(IFAB)で正式に「試行」が認められた、キャプテンのみが主審に話しかける(アプローチする)ことを許す制度のことである。判定をめぐって起こる選手によるレフェリーの取り囲みや、暴言、威嚇、ひどいときには暴行といった醜悪な行為をなくすための手法のひとつである。
この「試行」を認めるにあたってIFABは、詳しい「プロトコル(実施手順)」を定め、なおかつ、施行をする国の2部までのトップリーグや、ナショナルチームによる国際試合では「試行」を行えないことを明確にする通達を出していた。
ところが、6月から7月にかけて行われた欧州選手権(EURO)では、主催の欧州サッカー連盟(UEFA)がその通達を無視し、純粋なナショナルチームの大会であるEUROで、しかもIFABのプロトコルによらない方法で、この「試行」を実施してしまった。