■パイロットが敢行「さすが」の応援

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスのエセイサ空港のそばにはアルゼンチン・サッカー協会(AFA)のトレーニング・センターがあります。代表チームが合宿するところです。また、トレーニング・センターのそばには国立ベースボール・スタジアムもあるので、南米では珍しい野球場が見えるかもしれません。

 ブエノスアイレスには、もう一つ、近距離便専門の「アエロパルケ」と呼ばれる空港もあるのですが、この空港はリーベルプレートのホーム「モヌメンタル」のすぐそばにあるので、機内からもスタジアムが見えることでしょう。

 1978年のアルゼンチン・ワールドカップ決勝のキックオフ直前に、突然アルゼンチン航空の旅客機がスタジアム上空を超低空飛行したことがありました。パイロットがアルゼンチン代表の応援のために低空飛行を敢行したのです。

 当時、全国民がアルゼンチン代表に熱狂的な声援を送っていました。

 経済の停滞や軍事政権による弾圧が続く中で、代表チームが自国開催のムンディアル(ワールドカップ)で決勝に進出したからです。しかも、セサール・ルイス・メノッティ監督の哲学通りの攻撃的サッカーで、結果を出したのです。

 そんな雰囲気のアルゼンチンでしたが、さすがに旅客機による超低空飛行に対しては、批判的な声が圧倒的でした。しかし、パイロットの応援のおかげでアルゼンチン代表は延長戦の末にオランダを破って、初優勝を遂げることになりました。

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