■横浜FM関係者が「梶山陽平に似てますね」
藤田は東京ヴェルディのトップチームでデビューすると、その後、徳島ヴォルティスを経て横浜F・マリノスに移籍した。
その頃、横浜FMの関係者に「藤田は、FC東京にいた梶山陽平に似てますね」と言われたことを鮮明に覚えている。
なぜかというと、僕はヴェルディ・ユースで最初に見たときの印象が強く、「藤田は基本的には守備の選手」という認識だったからだ。
梶山は天才肌の攻撃的MFだった。ボールキープ力が高く、視野の広いパッサーとして将来を嘱望されており、年代別代表でも活躍し、北京オリンピックにも出場したが、A代表で活躍することはなかった。「課題は守備力」と言われていた。実際、梶山の守備はあまりに淡泊すぎた。もう少し守備の意識が高ければ、ビッグネームになれたはずの選手だったのに……。
だから、「藤田が梶山に似ている」と言われて僕は驚いたのだ。
「そうか、今の藤田はあの攻撃センスが期待されているのか!」
ただ、横浜FMでは、生え抜きの喜田拓也と藤田と同じく東京ヴェルディから移籍した渡辺皓太がMFで地位を確立していたため、藤田はなかなか出場機会が与えられなくなってしまった。確かに、喜田は横浜FMでは特別な存在だったし、渡辺も横浜に移籍して2シーズン目くらいからチームのやり方に溶け込んでいた。
だが、藤田の将来を考えると、ここで出場機会を失うのは損失でしかなかった。また、たまに出場機会が回ってきても、レギュラーの地位が与えられていないため、ついつい無難な選択に傾きがちだった。