横浜FM時代の苦闘とベルギーでの復活、ビッグクラブ移籍は必然の藤田譲瑠チマに「求められる」アンカー遠藤航の後継【パリ五輪ベスト8で分かった「明日のサッカー日本代表」】(3)の画像
藤田譲瑠チマがパリ五輪で感じた悔しさは、今後の成長の糧になることだろう。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)

 パリ・オリンピックを戦ったU-23サッカー日本代表の挑戦が幕を下ろした。ベスト8で敗退と、渇望したメダルには手が届かなかった。だが、その戦いぶりは、チームとして、個人として、大きな期待を抱かせるものだった。未来のサムライブルーの可能性に、サッカージャーナリスト後藤健生が切り込む。

■最初に受けた印象は「守備能力の高さ」

 僕は藤田譲瑠チマのことを特別に取材したこともないし、ヴェルディ・ウォッチャーでもないが、藤田が東京をホームとするヴェルディ・ユースでプレーし始めた頃からプレーを見る機会はかなりあった。

 最初に受けた印象は、その守備能力の高さだった。

 ボールをキープしている相手に対して、相手の体とボールの間に自らの体を捻じ込むようにしてボールを奪い取るのがうまかった。立ったままボールが奪えるから、すぐに次のプレーに移ることができる(スペイン戦でも、体を入れる場面が何度かあったが、残念ながらスペイン戦ではそれがファウルに取られることが多かった)。

「フィジカル能力」も藤田の武器だった。「フィジカル」といっても、とくに身長が高いわけでも体が大きいわけでもない。藤田の能力は足の速さとアジリティー(敏捷性)の高さにあった。バランスが良く、相手と接触しても簡単には倒れなかったし、たとえ倒れてもすぐに起き上がって、再び相手にチャレンジを仕掛けることができた。

 だから、当時、僕は「藤田は将来、フランスのクリスティアン・カランブ―(1990年代から2000年代にかけてレアル・マドリードなどで活躍)やエンゴロ・カンテ(2010年代から活躍。2016年のレスター・シティの奇跡の優勝に貢献)のような守備的なMFになるだろう」と思っていた。

 だが、ヴェルディ・ユースで経験を重ねると、次第に攻撃センスも垣間見られるようになっていった。ボールを奪った後、一気にドリブルで相手陣のバイタルエリアまで進出するプレーが目立った。相手の弱点を見極めて、冷静に、そして自信を持って攻撃に出ていた。

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