■欧州で進む「女性用ユニフォーム」開発
筋肉は動くときにたくさんのエネルギーを消費し、熱を発する。そのため筋肉量の多い人ほど体温が上がりやすいというのが、スポーツ医学の常識らしい。しかしだからこそ、筋肉は、同時に熱を体外に放出する機能も高いのではないかと、私は推測したのである。そのおかげで男性はひじ近くまである「半そで」でも十分に動き回れるのだが、女性はそれでは足りず、「ノースリーブ」状態を求めるのではないか―。
1992年に欧州選手権の取材でスウェーデンに行ったとき、「女性用のサッカーユニフォーム」があるのを知って感心した。「三分袖」、すなわち袖が「二の腕」の半分ほどしかないシャツだったのである。イングランドには、「袖」とは形ばかり、いわゆる「フレンチスリーブ」の女性用ユニフォームがあった。これらの「実例」は、私の「私論」を裏づけるもののように思われた。
日本では、「女性用のサッカーユニフォーム」の開発が遅れ、今も男性用ユニフォームの小さいサイズのものを使っている例が多い。なでしこジャパンでさえ、袖が短めの「女性用モデル」が提供されるようになったのは、ここ10年ほどのことに過ぎない。
2007年に東南アジアの4か国共同開催で行われたアジアカップ(日本代表はイビチャ・オシム監督)で、日本代表の羽生直剛選手(当時ジェフ千葉所属)が肩をたくし上げてプレーしているのを見て、私はさらに意を強くした。小柄で細身だった羽生選手。筋肉量が少ないため、女性選手のような「体温放出システム」を必要としているのではないかと、勝手に想像したのである。
「早くなでしこジャパン用のユニフォームをつくって、羽生選手にはそれを着させるべきだ」
酷暑のハノイで日本代表のトレーニングを見ながら、私は本気でそう考えた。