両SBが同時に高い位置をとる浦和の「今後」

 77分に浦和が1点をとって追い上げた場面。右サイドの石原から伊藤敦樹にミドルパスが出される。ボールに追いついた伊藤は、ドリブルでペナルティエリアに侵入して、マイナス気味のパスを中央に入れる。後ろから走り込んできた武田英寿が左足でゴール右下に決めた。
 伊藤がペナルティエリアに入ったときに、FWブライアン・リンセンがファーサイドに流れる動きをする。本来ならば、右CBの植田直通がリンセンをケアしなければならない。しかし、リンセンがファーサイドに流れたことで、伊藤のクロスの選択肢がペナルティエリア中央か、それともリンセンへか、と2つに増える。濃野公人がリンセンへのクロスを警戒して横に入ってくる。そして、植田はシュートブロックできる位置に立つ。
 しかし、リンセンの動きによってペナルティマーク付近がガラ空きになる。そこに武田が走り込んでシュートを決めるのだが、ここではマイナスのクロスへの対応の難しさが顔を出す。
 なぜマイナスのクロスの対応が難しいのかと言えば、CBは基本的にボールとマークする人を同一視野に収めなければならない。しかし、マイナスのクロスに対しては、CBがボールウォッチャーになって、人を見失ってしまうことがしばしばある。だから、このクロスに対する対応が難しいのである。
 浦和は、アディショナルタイムで武田のフリーキックによって同点に追いつく。前節のセレッソ大阪戦での失点を思い起こさせる武田のシュートだった。
 GKの早川友基がファーサイドよりに立って、3歩前に出てポジショニングをする。おそらく、GKとディフェンス陣の間にボールを蹴られると想定しての位置どりだろう。しかし、GKにとってニアサイドを破られることは屈辱的なことなので、もう少しニアサイドを意識したポジショニングをしていれば、ボールには触れたはずだ。しかし、あの場面での武田のシュートが素晴らしかったことは疑いの余地がない。

 浦和は攻撃的なサッカーを目指しているので、両SBが同時に高い位置をとることを「よし」としているのだろう。だが、これから浦和と対戦するチームはCBとSBの間に人を走らせるやり方をとってくるはずだ。そのためにも、渡邊のSBとしての適正を判断して、リスクマネージメントをとる選手起用と戦術も必要となってくる。 
 このまま同じやり方を続けていても、先制点を奪われて追いかける試合展開を強いられることになる。ヘグモ監督の決断にすべてはかかっている。

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