前方に広がるスペースに誰が走り込んできているのか、川崎フロンターレの右ウイング、山内日向汰には見えていなかった。それでもルーキーは確信していた。
「ああいう受け方はずっと練習していましたし、何よりもイメージのなかで新があそこに走ってくるのはわかっていた。新の動きは誰よりもわかっているので」
平日夜に2万720人が駆けつけたホームのUvanceとどろきスタジアムに、湘南ベルマーレを迎えた26日のJ1リーグ第20節。0-0で迎え62分だった。
右タッチライン際のDFファンウェルメスケルケン際からパスを受けた山内が、左足でトラップした次の瞬間に、ノールックの体勢から右足を振り抜いた。
前方のスペースを狙った縦パスに、1トップの山田新が以心伝心で反応する。ともに桐蔭横浜大から川崎に加わった親友で、くしくも誕生日が同じ5月30日で、自身の方が1年先輩の山田がDF舘幸希よりも早くボールに追いついた。
「日向汰からパスを受けて、日向汰がもう一回、潜ってくるのを待とうかと……」
舘を背負う状態で、ペナルティーエリア内の右側でボールをもった山田はとっさの判断で、ゴール中央へ駆け上がってきた山内へパスを返す選択肢を変えた。
「そのまま自分でいける、と思ったので。ああいうところの(競り合いの)強さは自分の特徴でもあるし、ああなったら迷わずいくと決めていた。奥(のファーサイド)にマルちゃんが見えたので、しっかりとパスを届けられたと思う」
舘と競り合い、後方からはDF畑大雅に挟まれながらも抜け出した山田が前を向く。湘南の選手たちは迫ってくる山田と山内に引きつけられる。湘南ゴール前を横切った山田のパスを、フリーのFWマルシーニョが右足でゴールへ流し込んだ。
「新なら勝つと思ったし、自分が引き連れたことでマルちゃんも空いたと思う」
山田と初めて先発で共演した山内が、先制点が生まれるまでの過程を、先輩への信頼感を込めて振り返った。