■「それがうちのスタイル」

 この日の川崎は通常よりシンプルに、ゴミスに当てて、落としを受けて前に運ぶというビルドアップをしていたため、前の方でボールを引っ掛けにくかったこともあるが、そもそも高い位置でボールを奪うという強度の低さが、攻撃面にもマイナスに作用しているところがある。そしてボールを持った時の持ち上がりの遅さは前線の決定力不足で済まされない問題だ。

 そして、もう1つの問題を指摘するのが、パリ五輪の代表候補でもあるDF馬場晴也だ。「今日の試合だけじゃなくて、ここ最近ずっとチャンスを決めきれてないし、点が伸びてない流れだったので。それが顕著に出た試合だった」と認める馬場は「ペナ内に入って3人目とかやっぱり出せていない印象があるので。押し込んだ中で、前の3人はやっぱり相手に捕まってるので、他の選手がいかにタイミングよく中に入って行くかが大事で」と語る。

「僕なんかも後からミドルだけじゃなくてペナに入っていく。捕まりにくいので。そういう3人目、4人目の動きが今は少ないので。そこでビッグチャンスがないのかなと」

 素早いトランジションで相手の守備が整う前に攻め切る推進力と押し込んでから3人目、4人目が迫力を持ってペナルティエリアに攻め込む迫力。その両面が現在の札幌には足りていない。

 それは守備のリスクも伴うが、馬場は「それがうちのスタイルだし、自分じゃなくてもボランチの選手が行ったりとか、逆のワイドがゴールに入っていくシーンを増やしていければ」と語る。

 ここで大事になってくるのが、意識1つ変えられる部分もあれば、一筋縄では行かない部分があるはず。ただ、まずは意識を変えることで、その先も課題も見えてくるだろう。

(取材・文/河治良幸)

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