■「僕自身はセンターバックがドリブルで進んでいくのが大好き」
ドリブルでカウンターに入った佐々木の視界には、左前方にフリーのFWマルシーニョが映っていた。対面の浦和の右サイドバック、石原広教も高速ドリブラーを気にしている。背後からは相手の気配が伝わってこない。佐々木は意を決した。
「最初はマルちゃん(マルシーニョ)に出そうかなと思っていましたけど、相手が早めに外側へなびいて中央が空いていた。そこ(ドリブル)は自分の特徴でもあるし、後半に入ったばかりでもあったので、思い切っていってみようと」
そのままペナルティーエリア内へ侵入した佐々木は、前日の好感触に導かれるように右足を振り抜いた。本人をして「最後は感覚でした」と言わしめた強烈な一撃が、浦和の守護神・西川周作の右手をかすめてゴール上へ突き刺さった。
川崎に再びリードをもたらした佐々木の今シーズン初ゴール、プロ3年目で通算すれば通算3ゴール目に、鬼木達監督も「本当に素晴らしかった」と声を弾ませた。
「僕自身はセンターバックがドリブルで進んでいくのが大好きだし、相手をよく見ながら最後はよく決めてくれた。前日のシュート練習で最後に気持ちよく決めていたので、そういう手応えもあったのかなと。そういう積極性は非常によかった」
浦和の隙を突いたセンターバックのドリブル突破から生まれた、誰よりも佐々木本人が驚いたスーパーゴールが結果的に決勝点となった。もっとも、佐々木を含めた川崎の選手たちを何よりも驚かせたのは、前日練習後に生まれた光景だった。
(取材・文/藤江直人)
(後編へ続く)